システム提案のコツ [2013年10月10日]
◆システムやITは、売上につながらない?
顧客や市場の創造こそがビジネスで、システムや仕事の手続きは価値ある活動ではないと考えています。価値がないとは、仕事の意味がないと言うことではありません。
付加価値がないのとあるのは、どこが違うかというと、その活動が売上という外部からの収入があるかどうかという事です。
言葉の定義では、付加価値=利益と労務費用 であり、付加価値の合計がGDPです。
ITがコストダウンや売上の効果につながるのは、この点でチャンスは限られてしまいます。省力効果は要員のシフトが確実に行われなければ、人件費の削減効果は出ませんし、ITによって業務スピードが劇的に上がるとしても、物流と精算がついて回らねば、売上効果はありません。
そこで情報システムやITで会社や社会が変わるというのは、創造的なビジネスに道具としてのITとシステムがあればこそです。利用主体が何より重要だと言うことが、どうも忘れがちです。難しいITやらシステムは、それだけで使いこなせないということになります。
理解が及ばないなら、そんな道具は近くに置かない。分かるまで、理解できるまで説明を受けるなり、やさしい使い方を考えねば無用の長物になりかねません。

◆改めて、システムとは?
用語の定義でもありませんが、仕事の目的に合わせて組み込まれるのがシステムです。
だから、必要な事を整然と確実にこなしていく流れ というのが、システムでしょう。
広くビジネスシステムには、経営に必要な業務体系が分割されてそれぞれにシステムが存在します。会計や販売、計画や管理といった業務機能が、人手から情報機器によって肩代わりされています。目的は、ミスの防止と時間の短縮を通じたコストダウンであるはずです。その他、人間の能力を超えた知識の蓄積や分析のためのガイド、発想と発見のための知識サポートがあるでしょう。全く新しい事業をもたらすインターネットマーケティングなどもあります。業務系、情報系、戦略系といって、情報システムの分類が行われることもあります。
物流業務でのシステムは、作業の手順や仕事の流れを制御するためにさまざまな情報システムが導入されています。でも、目的はコストダウン、スピードアップに違いはありません。だから、コストとスピードを記録管理することが最重要の機能です。

◆目的を失ったシステムがたくさんあります
本末転倒というか、目的と手段の取り違え というか、物流活動という付加価値のない職場に情報システムを導入することの迷いがないことに驚きます。なぜ、情報システムが必要なのか。手作業でできないなら、納得です。手作業より、コスト性能が高いなら、分かります。比較して効果があれば、効果を計算して導入のコスト計画が議論できます。
「システムがないと現場が回らない」というホントのようなウソがたくさんあります。在庫管理、デジタルピッキング、ロケーション管理、自動倉庫、EDI、配車計画、
ハンディーターミナルの棚卸、ASN出荷ラベルなどは、物流情報システムの中でもよく採用される機能です。処理する物量の規模(多さ、頻度、速度)によっては、効果があるかもしれません。効果が無いのは、導入による結果が比較できない、計測できないなら、はっきりとムダです。
在庫品目の600程度は、個人が管理できるレベルですから、棚卸しなどは特殊なシステムが無用になります。バーコードによる作業システムも、品目とスピードによって効果が出るもので、手作業や目視表示でも十分かも知れません。

◆こういうものですよ という悪魔の言葉に惑わされてはいけない
WMS(ウェアハウスマネジメントシステム)という物流情報システムの一般機能で過剰な性能となるものがたくさんあります。何より、コストダウン効果があるといいながら、コストや生産性を記録管理できないシステムが多く出回るのは、疑問です。
入荷から出荷までの伝票処理を自動で行うのは、魅力的です。しかし、そのためのソフト費用が本当に省力化効果で回収できるのかどうか。そこのところをしっかりと試算するか、できるようになっていない提案は不十分です。自社で説得できるためには、コスト効果を積算できなければなりません。「他社ではどうであろうとも、ウチには無理だ」という天の声を感じながら、売り込みを聞くべきでしょう。

◆供給が需要を生む のが、ITソフト業界
物流活動というどちらかというと、日陰的な仕事に明るい光を当ててくれたのは何より嬉しい限りですが、肝心なことを外して余計な機能を付加した情報システムが大変多いことに気を付けなければなりません。売り手市場に乗ってはいけないということですね。「動かないコンピュータ、ソフト」という記事がちっともなくならずに、次々と他人の不幸話として語られています。導入しようとするシステムが、そのようにならないためにも、「本当に必要で、効果があるのか」という検証をしなくてはなりません。

◆情報システムを売る人のかっこよさ
システムを必要としている業界を研究し、数々の導入事例を持ち、十分な評価を受けているから、「あなたも入れるべきです」とハッタリを語ることが常套手段でしょう。頼りになるな~と思うのは当然ですが、「絶対に儲かりますよ」という営業マンとどの点が違うのか、”おまえが儲かるんだよなぁ”というパロディを思い浮かべる余裕が欲しいものです。ハッタラれたら、ハッタリ返す ために、「コストダウン効果」を証明する機能について、しつこいような議論をふっかけるべきでしょう。

★導入から安定までの、生産性推移はどのように分かるのか
  (時間、物量、コスト)
★運用コストの管理はどうやって把握できるのか
★ソフト・ハードの維持保守費用の回収計算は、どうするのか
★投資回収プランはどうなっているのか
★ストップした場合の、リスクと補償はどうなっているのか
★最悪の事態には、どんなことが考えられるのか


この辺の議題を逃げないできちんと語れるなら、そのハッタリさんは本当に頼りになるはずです。

◆航空機のパイロットにはすぐなれない?
自転車や自動車の操縦ができないパイロットはいません。自社の経営環境に「そんな情報システムはまだ早すぎる」という判断は誤りです。ITを知らないで後送りすることも、問題の先延ばしとなり、いつか泥を被ることになります。ITを必要とする説得と試算を厳密にして、環境に応じた規模の情報システムを導入しなければなりません。
パソコンの導入に、ワープロ、表計算、データベース、通信(メール、ネット)の順序で習熟していきますが、その次がパッケージソフトです。ワープロできない人に、物流情報システムを説明してもナンデダロウ?で時間のムダになってしまいます。
今買っておかなければ、もう買えませんよ というのではありません、ハッタリに心して対処して欲しいのです。道具は買い換えができるもの、自動車もグレードアップができるもの。ITも同じに考えましょう。熱で迷うのではなく、理で考える。
それは、費用対効果でしかありません。同業他社を見て欲しがったり、売上高比率で納得するなんて、おかしな理由なのです。
クラウドコンピューティングがビッグデータをぶら下げて、街を闊歩しています。ITとどうやって付き合うか、次の提案をどう受けるか、売り込まれる前に心の準備が必要なんですね。
返品大歓迎で売上が伸びる [2013年9月10日]
デフレ対策としての低価格販売が終わりません。何時まで経っても低価格なら、どれほどの数量と回数を売れば良いのでしょうか?って、傍観的な書き方はヒンシュクを買うのでやめます。
経営や事業の目的は、継続性にあって何より売上や利益の獲得が必要です。「社会に貢献するために〜」まずは、収支の黒字と納税が必要だからです。コストダウンも大切ですが、毎年繰り返してゆくことの大変さはどうなんでしょう。

◆経験曲線とムーアの法則から分かること
子供も大人も成長しているはずなので、去年と同じ事なら短時間で能率よくこなせます。学習も短時間で済むようになるし、深さや広さが可能になります。これを経験曲線と言って、生産や販売活動にも効果が証明されます。すると、生産コスト、販売の効率コストは経験とともに下げることができます。
ムーアの法則とは、intel創業者が「半導体の集積度は12〜24ヶ月で倍増する」という経験談を語った事に始まります。こちらも生産性や性能が倍増するためには、ある期間という「経験」が要素になっています。ですから、同じジョブなら一年経つと能率があがり、コストが下がり、同じ価格で勝負する必要は無くなるのです。 アメリカに車を売りに行った日産、トヨタ、ホンダは、初めはダンピングが酷いと言われて、価格競争が出来ませんでした。学習効果、経験効果を先取りして、量産価格での販売を狙ったわけです。
ということから、何より経験を重視することが大事。つまり、生産活動と販売活動を止めてはイケなくて、縮小均衡すると次の手がなくなります。コストダウンは無用とは言いませんが、それよりも販売の拡大、生産の継続を目的にすることが、経営や事業の目的に沿うことです。
生産と販売が目的なのですから、物流は手段です。コストダウンも一時期の手段に過ぎず、永遠のコストダウンなんてきれい事に過ぎません。あまりに近視眼的で、あってはならない取り組みです。・・・どうですか?
コストダウンは一時的に利益を確保するためであっても、目的でもないのですから、軌道を戻しておく必要があります。物流活動にムダがあるという主張にも注意しなければなりません。自己都合や近視眼であることが多いからです。例えば、返品物流を嫌う現場があります。面倒だからだけでなく、手間とコストがべらぼうに掛かるというからです。

◆なぜ、返品されているのか?
物流ミスのための返品は、交換であってこの際、除外します。リカバリーはどうしても必要だからです。
顧客や売り場から返品されるのは、「もう売れない」からです。だから、別の商品と交換すれば、<ウチはもっと売れる>のですから、返品を受け入れれば次は販売が伸びることになります。
過剰に仕入れた商品を返品する場合には、在庫の消化が終わるまでは販売が停滞しますが、それは本来の姿に修正されるということで、良い傾向です。
◇返品したい! → 売り場が狭くなった、新しい商品が欲しい、・・・
顧客の返品には関心を持って明細を見るべきであって、大歓迎すべき顧客の重大な意思表示なのです。次は、「もっと買いたい、売りたい」という症状なのに、・・・・。
売り場に商品がないための欠品は、どれほど生じているのでしょう。それを解決するための返品なのに、どうして今まで嫌ってきたのでしょう。もっと、「返品を受け入れますよ!」と声を大きくすれば良いのに。
販売が伸びることによる利益と、返品のコスト削減をアピールすることとの比較は、あえてする迄もありませんね。

◆およそ販売の物流コストは、出荷金額の5〜10%
販売の粗利益は15〜35%位でしょうか、業種や業態によっても異なるでしょうが、利益が物流コストで相殺されてしまってはオカシイですけれど、返品の受け入れによるコスト増加と販売の促進のための利益増は、比べる必要がありますか?
売上が伸びない時の苦し紛れにコストダウンを仕掛けて来ましたが、そのことが縮小均衡になっているとしたら、明らかに目的と手段のはき違えが起きている事になります。
手持ち商品アイテム数と返品をしてくる店舗のアイテム数は、まったく桁違いのはずです。店に無ければ売れませんから、返品によって売り場に新たなアイテムが並ぶことを歓迎しなくてはオカシイでしょう。
返品大歓迎! いつでも、お受けします! こんなセールスが、あまり居ませんからお客様にとっての感動や衝撃につながるのです。
物流部門がしっかりバックアップしますので、どんどん返品を受けましょう。
ビジネスとしての物流 [2013年8月10日]
◆企業価値としての物流
M&Aが盛んになりました。マーケットと自社製品を苦労して組み立てていくより株価をにらんで買収を掛ける方が手っ取り早い、というような現実がそこかしこで見られるようになっています。企業価値は、将来の収益を想定利回り(金利)で割り算してみたとき、現在の株価総額が妥当かどうかを見ることが企業査定というものです。
土地神話が崩れて、土地が産み出す地代や家賃を金利で割り算して現在の価値を決めるのが、土地の収益還元法による価格評価 というモノです。もう急激な値上がりはしないから、ランニング収益額を金利で割り引くと現在金額が計算できるように、土地も企業も同じような計算式で語られるようになりました。
企業にはマーケットが付いていて(のれん代)業種が同じなら、売上高利益率も遜色ないと見られてしまいます。物流コストが5%なら、企業価値は利益率で計算できると見られています。もっともM&A対象企業は、収益性や内部留保に問題を抱えているので(ニッポン放送は子が親を支配してました。フジテレビは内部留保が膨大でしたね。ホリエモンはよく気が付きました)物流を上手にすれば、利益率が上がるかも知れないと言う判断はどこもしていないようです。
物流費はおおむねその企業の経常利益率に匹敵しています。だから、物流改善を施すと、仮に20%の効率化実現は利益への貢献がとても大きい。さらに、改善が売上増加をめざし、在庫削減がキャッシュフロー改善となるなら、M&Aの隠れたキーワードは物流なのです。

◆3PLの実態はM&Aに近い
物流事業者の新しいサービスメニューに、自社物流を丸ごと請け負いしてしまう形態が目立つようになりました。業務委託によって解体された自社物流部門は、人材が配置転換できずに、しかも残された物流資産も譲渡という形式を取ることによって、3PL会社に全面的に売却されるということが起きています。
物流部門を買い上げるパワーがある3PL事業者は、物流を拡大して清濁併せ飲む方式で巨大化を目指しています。人材と資産を譲渡されるということは、一挙に売上と経費が増えることになり、事業計画やコントロールが急激に難しくなります。
標準化や保有する情報システムの中に組み入れれば成功で、物流拠点を丸抱えする時がとてもしんどい運営になっています。たとえば、従来の自社物流運営費用を遥かに下回る個建て料金制で受託するとなると、資産の減価償却と人材の能力向上のための標準教育研修コストがずいぶんと嵩むし、収益への反応が遅れるからです。
M&Aが強烈なリストラと人材の排除を行った歴史を見ると、3PLによる物流部門のM&Aはかなりソフトな手法になっているようです。なので、3PL事業の収支は必ずしも晴天ではないようですね。

◆在庫は罪庫で財庫となる
物流現場の悩みの多くは在庫に集約されます。多すぎる、少なすぎる、入出荷の頻度が早すぎる、紛らわしい商品が多い、在庫場所が分散されている、・・・ムダな移動が頻発する・・・など、在庫のポジションや性格、経営の意思と方策がしっかりしていればみんな防げる問題なのに、営業や生産の都合が先行していて、いつもシワヨセが物流に依っていると感じています。
コストの割合が高い輸送費用も、在庫場所やポジション、計画がしっかりすれば効率重視の配送が組めるのに、急な変更、読めない予定、もともとの赤字受注などがあって、コストのコントロールも神の手に委ねていて天を祈るの同様です。
松下電器はかつて創造と破壊というスローガンで、常識をすべて壊すために在庫を徹底的に罪悪視しました。もともと、在庫が多いのは安全のためであって、少ないとどんな部門にも緊張感と精度が求められます。さらに、在庫を現金と見なしている風習を固持した結果、キャッシュフロー改善にもつながりV字回復を遂げています。罪庫が財庫に転換したのは、高度なSCMシステムでもなければ希有な経営者の登場でもなかったのが印象的です。職場の緊張と慎重さだったのです。
部門の協調と同一の価値観、この場合は製造も販売も在庫削減の大方針を守りながらの改革実行でしたから、財務が常に目を光らせていました。在庫削減が収益の飛躍的な黒子であったことは記憶すべき点でしょう。

◆在庫を制するなら、拠点も変わる
マーケティングは企業活動そのものであって、物流も中に含まれています。いわく市場と自社のカップリング というものです。売りたい、買わせたい、その気にさせるというのが、マーケティングなら、調達や生産と販売エリアの中間に物流拠点があることが望ましい。物量の重心点が拠点であって、需要と供給のエネルギー極小化ポイントが物流拠点であるべき場所です。
距離であれ、在庫能力でアあれ、物流作業効率の最大要素(輸送費、人件費)を賄えれば、それは時代や外部環境に応じて変化するものですから、孟母三遷の教えのように物流拠点も移動することが良いのでしょう。
道路事情、作業要員の募集事情、入出荷速度の制約になる建物構造に着眼を置いたのが最近の巨大物流施設であって、建築コストの低廉化から思いの外お安く提供されているのにびっくりです。効率化効果で引っ越し費用や改造費用も数年で捻出できるとうたわれています。
物流管理の対象は、戦略面から見れば在庫と拠点に尽きます。国内製造か海外生産かというのも、在庫と拠点で語れますから同義です。

◆自社物流か共同化、アウトソーシング
自社で続ける意味と意義、共同化することの効果とリスク、アウトソーシングのメリットと将来への不安、・・・。判定するための検討課題はそんなに多くありません。性能機能効果コスト、問題は将来へのリスクがあって、自社に積み上げていくことの重要性は、物流技術の専門性より勝る場合が充分にあります。
自社物流をコストで測るなら、その前に販売力の余地と拡大可能性を探る検証が先で、商品採算や顧客マーケット採算を施すことが、本当のムダな物流を排除する事につながります。コスト削減を目標にしてはならず、手段と見なすことが先です。

◆販売の速度、生産の速度
いずれの部門も速度が効率につながります。原価低減もやはり速度で、ゆっくり作れば、まとめて仕入れればお安くなるのは在庫の弊害を除いても正しい。商談を長引かせれば有利な条件も欠けてゆくモノで、販売にも速度が収益に影響しています。短期の商談はリベート、物流サービス、まとめ値引きなどの効率が下がる、上がるで採算が読みにくくなります。
四半期決算でリベートや決算利益算出をするなら、製造と販売のバランスを見る部門が物流に移管されて、需給調整が物流の最も重要な活動目的になります。
在庫、拠点、製販の速度バランスを調整することが物流の役割で、少ない利益を確保するためのムダを排除する権限と責任を持たせるのに、自社なのか他社委託なのかをみるなら、自社の答えは明白になる。というのが、物流を一言で語る妙ではないかと思うのです。
ウチの物流は難しいよ という声は、裏にも回りにも深い意味があるのでした。
物流営業の基本、顧客満足のウソ [2013年7月10日]
◆物流サービスの販売
物流会社の営業マン研修で話題に上がるのが、総合物流サービスとSCMのソリューションサービス。採用される提案書の作り方から、プレゼンテーションの技法と演技。モノとコトでは売り込み方が全然違うはずなのに、期待される方の勘違いがあるようです。物流サービスは、コトの販売でも特にややこしい生産財で、売り込み先の担当者を口説き落とすのとはわけが違います。

◆モノとコトの違い
PHP文庫で絶版になった「販売の科学」唐津一著(類書「ものを売るにはコツがいる」)には、販売は少しづつ調べて売り、売って調べる科学があると説明しています。唐津先生は日本に初めてマーケティングの思想を導入した方で、科学的な販売を提案してくれました。マーケティング=広告、市場調査と連想されがちですが、唐津さんはだからといって、市場調査に頼るのはナシですといいます。マーケットに需要があったとしても、売り手はすでにいるはずで、市場が拡大しても自社の供給に限界があるから、売るのは自社の成長が精一杯でしょう、とあります。びっくりな視点。つまり、どれだけ「買ってくれる人」がいたとしても、「売るつもりのあなた次第です」と看過しているのです。
営業はより多くを売ることを決意していますが、じつは都合よく売りたい、これくらい追加で売りたい、と潜在的に思い込んでいますよ、と指摘します。
モノを売るにはそれなりの失敗と経験が知識として積み上がりますが、日本ではコトを売ることに慣れていません。大成功した経験がありません。コトは売り始めるまでと売った瞬間とリピートには、それぞれ大きなハードルがありすぎるようです。売った瞬間、「やったー!」と「シマッタ!!」は表裏の関係にありますよね。
運送の仕事なんて特にそうです。受注して配送を無事に終えられればホッとできますが、約束通りに集荷に行っても思いの外待たされたり、伝票が不備だったり、納品に場所が分からなくてウロウロしたり叱られたりで、「こんなはずじゃなかったぁ」というのがあんまり多いので、求車求貨のシステム販売は不調で、かつての最大手も店じまいしてしまいました。

◆コトを売るには
1 サービス全体像の説明
2 手順やプロセスというしくみの説得
3 実績や評価という過去の成績書をさらに説明ようやく、
  「分かった、買うよ」と言われてから
4 お客側期待の内容を理解して
5 自社での処理手順や仕様を確認して
6 採算や収支を改めて検算して
7 やってみて、期待と予測と予定があてはまったかどうか
8 リピートをお願いすべきか、お断りすべきか非常に悩んで
9 しばし、時間が過ぎていく


 こんなステップになるのでしょうか。
しかも、やっかいなのは説得できても、お客様側の稟議だ審査だ、決裁だ、精算条件が決まらなくて、終わっても「料金をいただけるかなぁ」という不安がずっと続きます。生産財の販売と同じように、アフターサービスや提供結果の評価報告までも求められたりして、息の長い、実に苦労の多いことに唖然とすることがある。小売りの対面販売や卸の掛け売りとは、まったく次元や深さ、ややこしさが異なることが、コトの販売は事前に想像がつきにくいモノです。

◆買って喜び、売って喜ぶ
松下翁はこれを言いました、互いに歓喜が無ければ商ではないと。物流サービスの販売では、売った瞬間にややこしさで苦労するけれども、売る前にはさらに輪を掛けた悩ましさがあります。
まず、生産財だということ。商談を始めてまとまるまでに、「前任者の決定」を覆すための情実がいるし、料金競争で始めたとしても仕様や中身、付帯サービスつまりは無料奉仕の範囲が広がるものです。
アフターや保証が必要で、失敗したら賠償まで覚悟しなくてはならないから、何よりリピートがあることを前提にした収支を見なくてはならない。
リピートがない、なんてことの無いように細心の詰めとリスク、予想外の出来事を読みとる能力も必要だから、念には念を重ねた思推がぐるぐる回る。
あんまり考えても始まらないや と、素速い決断をした案件に限って不測の事態が起きるもので、運を羨むなんてことも先輩には多かったような。
共に喜びが生まれる大成功は、案外と少ないように聞いています。

◆売るのは自己都合から考えないと
物流子会社が外販を進めるのは義務だから仕方ないとしても、倉庫や運送の営業には、やたらな営業は禁物という不文律がありました。それは、失敗が思いの外に多かったからでしょう。売って喜べない経験が日常茶飯事だということ販売活動は、顧客の問題解決であってソリューションだ。顧客満足こそ、販売の原点に持つべきコンセプトだ、というのはウソです。
消費財でモノなら、顧客に合わせて商品を開発して売り込むのが常道です。サービスもそうですし、なるべく多くの顧客市場をカバーするように自社の規模を拡大しながら、さらにシェアを高めるような競争戦略が必要になります。
生産財、つまり顧客がそれを利用してさらに販売活動をつなげるようにするには、新規に開発する必要もありますが、既存のモノやコトを当てはめていくプロダクトアウトが開発経費や運営コストを吸収する第一の手段でしょう。
物流企業が販売、つまり営業活動を行うには既存サービスの開発受託、共同化、次に新規設備投資を伴う事業化でしょう。
運輸であれば、積載、稼働率、実車率を上げるのが最初で、倉庫なら保管率や回転を上げるのが当初の企画になります。つまりは、自社の効率追求、自社都合の埋め合わせが必要なのです。
それなくして、顧客満足は自社不満につながります。ひいては、顧客も自社も効率化が進まず、最適原価、最少価格が図れなくなります。

◆格好の良いセールスは互いに苦労する
買って喜び、売って喜ぶ構造が物流サービスに成り立つとすれば、それは販売側の経営資源(倉庫やトラック、要員)の効率化が図られるように、同時に荷主側にも従来以上のコストや品質、精度の向上が見られなければなりません。
そのことを正面から切り出すことは少なく、どうしても顧客満足を売り込み、買う側も当然として構えています。どちらに非があるかは、見栄を張った方に違いなく、後での苦労が見え隠れしています。
売った瞬間にシマッタ、買った瞬間にいつまで大丈夫か、と悔やむことに。物流サービスのコトということと、生産財になっていることの性質をきちんと理解した商談で無ければ長続きしない。
かように、物流サービスの販売は悩ましいものであるのです。
人が動く、物が動く [2013年6月10日]
◆大型連休をゆっくり過ごせた方は幸いです。
物流は人と物の仕事ですから、小売業や行楽地で働く方には休みがありません。そして、企業間取引を行なっている物流では、この連休こそが在庫整理や倉庫統合、移転のラッシュになります。
◆沢山の人とものを扱うのが物流の仕事ですから、ピークやラッシュはお手のものです。どうすれば、行列を作らずに人の列を捌くか、とかモノのラッシュを乗り切るかなどというのは、経験も大切ですがセオリーがあるので学習して臨みます。
物が売れるのは確率だ、という視点で見ていると在庫管理や発注でミスをします。売れると思って大量仕入れをしても、外れて売れ残ったり、逆に品切れで残念な結果になった経験はあるでしょう。計算式や予測計算は、当たるほうが珍しくて外れてばかりなので、理論の妥当性に疑問があります。
在庫発注理論が未だに完成せず、同士しても計算式では多め多めに偏在してしまうのは人の行動が確率では求められないからです。
もし、確率や行動が計算式で示せるなら、経済問題よりも死活問題となる事故予測に使っているはずで、そうでないから研究者の満足や公式を売っているビジネスになっているだけです。
◆人通りの多い道路にある、コンビニにどれだけのお客さんが入店して、どんな買い物をするかどうかは確率ではなく、人通りの行列にどんな人々が含まれているかに依存します。
人は全くの自由意志で判断し、行動し、買い物をしていると思われがちですが、その行動予測は、生まれ、育ち、学習、1時間前の心理状態、1週間前の食生活など、あらゆるデータの関係性で決まります。100人の通行人がいて、何人がコンビニに入店するかどうかは確率ではなく、それぞれの人間の過去データの集積に依存しているのです。
ですから、大数の法則を利用するような確率では購入分析や予測はできません。そのことをセブンイレブン鈴木社長は『仮説と検証』と呼び、予測と実績 とはしませんでした。POSレジはあくまでも検証用であって、過去データの集積であり、予測ではない。
◆ニュースや雑誌では、POSレジによって売れない商品が見つかり、売れる商品だけの発注が可能であるようなことを言いますが、全く逆です。
コンビニの売れ筋商品は、他店にあって、自店にはない商品なのです。ない中で売れた順番で売れ筋だ、というならその店の将来はジリ貧ですから。
よって、在庫の補充や発注業務に理論はなく、実験による経験しか役立ちません。
◆あたかも発注点や予測値が計算式で導かれるような主張は、コンビニでは過去の経験則を活用する以外に方法はなく、予測理論はすでに終わっています。
新商品は広告と他店の成功例を調査することで、実はそんなに難しい方法ではない。むしろ、廃番を早めに見切る決断が在庫金額を抑えて成功する方法なのです。
人の行列を捌く技術は日本の小売業はどこも成功しているのに、コンビニやスーパーの集合レジを活用している店舗はとても少ない。行列を自慢する勘違いが多いのは、買い手にとって不幸です。
◆高速道路パーキングエリア、百貨店、大型書店、和菓子店、パン屋さん、どこもかしこもレジ前にお客さんを並べて満足している風景が大型連休では目立ちます。行列ができる、という形容詞が小売業の成功のように言われるのも勘違い。好んで並ぶわけではないし、行列に満足感は与えられません。並んでいる間に次の買い物の情報を与えたり、スマホを使って追加の注文が取れるなら、行列の楽しさがあるけれど。デズニーやアップルストアに行列を作るワクワクする楽しさと、レジで待たされ、隣に並べば良かったと失望させる経験は、二度と来るもんかという評判にもなりかねません。
◆レジの通過時間と買い物の量には、相関関係も公式もあります。買い物カゴの大きさにも平均売価やチラシの掲載品目数にも関係しているでしょう。行列を作らせて喜んでいるうちは、お店の親密度が徐々に下がり、数年でピークアウトします。そのことの証明や実験の追跡記録、まだ流通業としては理論化されていませんね。ようやく品揃えの不経済性がシーナ・アイエンガー先生によって証明されたくらいです。人と物の扱い方についての研究は、実は物流の領域ですからもっと余地がある。どうしたら売れるか、どうすれば顧客は並ぶか、親密度を上げて、購買単価を上げるには、なるべく多くの買い物をさせるための買い物かごと店舗内の情報の提供方法など、スマホのアプリにだってまだまだ可能性があるのです。並んでいる時になぜ、買い忘れを知らせないのか、来週の予告を流さないのか、クーポンの予告をしないのか。
◆売れないのは価格が問題だから、景気の影響だから、という横並びの発想と言い訳では未来は開けません。あと10円高く売るための工夫、もう一回並んでもらうための愛着度を高める方法、「こちらもいかがですか」と声をかける勇気と習慣性も、販売の科学であり物流の技術だと思うのですが、まだ大学でも理論家も登場していないので、日本の将来は、十分に明るく、可能性が大いにあると感じたGWでした。
売り場が変わった、O2O [2013年5月10日]
◆国民経済白書でも経済統計でも、日本の最大産業は小売流通業です。世帯数が52百万くらいで毎月平均30万円の消費支出がありますから、150兆円が卸小売業の取り分、売上金額です。
◆ネット通販がもたらしたことは、売り場、買い場の変化です。「マルイは駅のそば」と自信ありげに宣伝してた頃からは随分たちますが、小売業態が大改革してきたのは、この20年です。
駅近くの百貨店、エキナカの専門店から郊外型大型ショッピングセンター、そして町中のコンビニ。自転車で出かけるスーパーは、深夜営業しても値下げ商品さらいにしかならないので、ネットスーパーに変わりました。
御用聞きが専門だった酒屋さんは、カクヤスさんが自転車で配達しています。生協さんもネットカタログで定期購入が当たり前になりました。
そこで、買い物の姿が駅→自家用車→徒歩→玄関→パソコン と徐々に移ってきているのです。特にパソコンでは、価格コムとかグーグルショッピングでは、価格情報が丸裸にされて、いつどこの店ではいくらで最安値か、一瞬でわかるようになりました。
更に、逆オークションやギャザリングというビジネス特許では、買回り品を買い手が値決めできるまで進化しています。
◆ORIGAMI という最強スマホアプリ。
世界一の小売業を宣伝するアマゾンも携帯アプリを提供しています。放おっておくと、「あなたにふさわしい商品はこれ!」っていうメールが自動的に届き、<じゃ買うか>とクリックすると、「一緒にこれもお勧めですよ~」とアシストが効きます。商品名で検索すれば最安値がわかり、買おうとすると同時にオススメが示されて、思わず衝動買いとなる仕掛け。ブランドショップではタイムセールさながらの、限定フラッシュセール案内が届きます。Origamiは、携帯キャリアのAUが5億円出資したベンチャーです。
ドコモがDモードで、タワーレコード、らでぃっしゅぼーや、マガシークなどに資本注入して、新しい買い物ゾーンを作ろうとしている対抗策です。その出来の素晴らしさは秀逸です、画像もきれい、扱うブランドも見事、価格はそれなりですけれど、GILTのような二次流通品ではありません。
◆買い場がスマホに移行していると、カメラ、アプリ、プッシュメール、GPS連動となると、どこでも買える状態に追い込まれます。便利さを超越して、買い物体験がマーケティングでどんどん科学されているわけです。
そのうち冷蔵庫にアプリが付くでしょう。食品の鮮度や買い物リスト、材料での夕食献立がクックパッドと連動するのも間近です。
過去は変えられないけれど、未来は意欲的な人々によって作られること、ダイナブックを宣言したアラン・ケイのようです。スティーブ・ジョブスはもっと過激に宇宙を変える!と宣言していました。
◆買い物や消費はものの移動ですから、物流に瞬間まで速度を上げることが要求されてきます。即日無料配送がずいぶんと目立つようになってきましたが、物流コストを物流会社に頼るのは、ちょっと行き過ぎですよね。
物流サービスの進化によって、訳あって高い安いの比較がされるようになるでしょう。ただ届けるだけなら、宅配ボックスに入れるだけなら、作法もマナーも制服も不要です。元気な挨拶もいらないし、丁寧に扱うかどうかも誰も気にしません。
玄関で御用聞きをして、前の注文の様子を伺い、操作説明や修理の受付、商品説明をするなら、頼りになるコンセルジェなんていう態度が必要になるかもしれません。
◆物流と販売活動は、徐々に一体化してゆき、そして物流コストが販売費用として認められるようになるのに、そんなに時間はかからないでしょう。ただ動かすだけなら、というのと販売支援、販売そのもの、購入サポートをするまで至るなら、B2Cは進化を続けるはずです。その意味で、ネット通販と物流はこれからも旬なビジネスとして注目されているわけです。
◆アマゾン楽天ヤフーとドコモ、AU、ソフトバンクの競争が始まる前夜です。かつての通信販売は、無店舗無責任やりたい放題の業界でした。在庫を持たない、店舗も営業マンも抱えない、経営リスクは一発当てるまでの辛抱という、不誠実そのものの業種として、業界は信頼性を頼りに足並みを揃えようと苦労して来ました。
だって60年も昔から、雑誌の変な広告主だったし、扱う商品も影のあるものばかり。痩せるボケない綺麗になる、・・・かも知れない、個人の感想を商品説明に仕上げてたわけですから、半分は嘘だよね。それが大変革を始めています。情報革命から感性革命の真っ最中に、カワイイ商品がゾクゾク登場して、スマフォで瞬間販売されるわけです。
駅のポスターにQRコードを付ければ、それがカタログになり、ネットチラシとなるわけです。エキナカ店舗より遥かにスクラップビルドが進みます。事実、2年前の韓国ではイギリスTESCOが地下鉄内にスーパー陳列棚をポスターで作ったのですから。
物流が正確迅速低コストだけでいるなら、競争するまでもなくM&Aで巨大化するしか生き残る道はありません。どうやって販売に関われるか、情報システムなのか、アイデアなのか、それとも売り子そのものになるのか。そろそろ分かれ道が見えてきているように感じます。
物流のサービスサイエンス [2013年4月10日]
物流改善のヒントと最新の現場動向を紹介します。業種を越えた改善手法や最新の理論と手法を物流現場に導入することができます。

◆昔、高級住宅街の田園調布商店街中程にパチンコ店がありました。カラオケも小さなスナックにしかありませんでしたから、娯楽の殿堂っていうカンバンにも威光があって、石原慎太郎邸宅や長島茂雄オフィスも近くなのでご子息達を見かけたものです。
ということは、僕も通っていたわけですけれど、いつもがらがらなのでオーナーは時々缶コーヒーを振る舞ってくれて、『玉貸しはシンドイね~』って話してました。
◆パチンコ、コインランドリー、駐車場、カラオケルームなどの施設を提供する産業はサービス業です。無人営業もありますが、管理人や接客のために要員が必要です。
サービスは瞬間の産業です。その時の従業員とお客さんとの接触で料金が発生して、繰り返し利用してもらうにはある種の秘訣が必要です。
あそこは良いよね、ありゃダメだ、仕方がないからあそこかな、・・・・フードサービス、旅館ホテル、学習塾や講習会やセミナーなどもサービス業でしょう。
工業化社会は大量生産、大量販売で、安定した品質の商品が無限に手に入りました。いつでも、どこでも、同じモノが買えます。コーラは全国どこでも同じ味。安心です。
方やサービス業は、抜群に良い店とこりゃダメだ残念な店が混在しています。カンバンだけでは心配なので、フランチャイズシステムで品質のアピールをしています。
◆物流業が「玉貸し」「遊ばせてやる」という、人貸し、場所貸し、トラック貸しからサービス産業だと言われるようになってずいぶんたちます。それは、規制緩和が行われた直後から、誰もが口にするようになりました。
けれども、品質や格付け、程度の違いは明かで、老舗、中堅、大手、全国区など、数万社の企業が並んでいます。みんな競争で苦労しています。立地やサービスの違いで競争していますが、貸出料金での競争が一番激しくて苦労なのです。
『どうすればサービスで競争できるか?』というところに焦点を当てると、そこにはマーケティングやサイエンスの余地がまだまだ残されているのです。
◆マーケティングは、<失敗しないための販売の科学>という別名を持ち、論理的、合理的な販売活動を保証しています。4Pに代表される、販売の基本哲学です。
片やサービスは、<再現性の乏しい、不安定な、かつ改良の余地のある産業>として、例えば旅館ホテルでは、一泊6000円のスーパーホテルから、カールリッツのような8万円のホテルも、機能的には泊まるというサービスの違いが料金に表れています。
安くてもサービス、高級な高額でもサービスですが、どこに落としところがあるでしょう。
物流サービスは、市場価格で決定されてしまいます。サービス従事者の賃金や給与も、市場価格なんですね。比べるモノがあるから、安い方に引っ張られるのは仕方がないのでしょうか。
給与や報酬は、企業収益の分配か、市場価格のどちらかで決まります。比べやすい市場価格にどうしても影響されますが、今のITバブル経営者や金融機関は、企業収益が莫大なので、分配率としての従業員給与や報酬は高額にとどまって羨ましい限りです。
◆サービスを瞬間だけに終わらせず、リピートや安定を確保するために、サイエンスという手法が考えられます。どこをどのように科学的にするか、っていうと、瞬間を支えているお客さんの期待と提供側のバランスを確保することに尽きます。
サービスは事前期待が明かです。「安心」「気分がいい」「当然やってくれる」「きっと大丈夫」という、お客さんからの事前期待を裏切らないこと、下回らないことが大切です。
それを決定づけるのは、契約や説明です。<当店は~~をお約束します>というような、ステートメントです。『娯楽の殿堂』でもいいですけど、曖昧ですね。
『どこよりも安く』『富士山の風景をお約束』『世界最高の味覚』・・・何とでも言えますし、どんな期待をふくらませても構いませんが、<カラオケ>と書いてあるだけの店よりは、ゴージャスな○○があります!っていうのうが良いですね。
◆サービスサイエンスとは、期待と提供のバランスを取ることです。しかも、合理的、論理的実証的となりますから、どうしてもサービス定義のステートメントが必要です。契約書が一番でしょう、そして少なくとも契約書でうたった以上の結果と成果を示すことが必要になります。
ちょっと前に、物流業界では<サービス・レベル・アグリーメント:SLA指標>などと言うことが提言されていましたが、それでも事故率、ミス率程度のことで、計測が難しく、状況変化に対応できずに消えているように思います。契約にうたい、その結果を保証していれば、それは科学的と言えるでしょう。
そしてさらに、提供側の努力や態度に好感度が持てれば、それでサービスの品質は高まっていると感じられ、リピートが起きるのだと考えられます。
◆そこで、サービスサイエンスとしては、
1.事前期待をトレース(契約で保証)
2.正確・迅速・柔軟性(実績で評価)
3.共感・安心・好印象がなければ、解約、値下げ、非難される
という3点を抑えておく必要があるのです。どちらにしても、現場や担当者の印象=相手からの直観 を大切にすることが必要で、産業革命から始まったビジネスが、情報革命を経て、さらに感性革命(かわいい~で決着する価値観)が主流となっている現実に目を向ける時代なのですね。
現場を変える20のチェック [2013年3月10日]
◆「コストを掛けない現場改善」のチャンスは今
年度末を迎えて物流現場では期末棚卸しと来期の予算作りに追われていると思います。燃料高騰、人手不足、コストダウン要請、内部統制のために監査人や会計士が訪れての案内にも時間がとられます。一年を振り返り、来年度を新たな決意で迎えるなら、「コストを掛けない現場改善」のチャンスは今。

<コストを掛けない改善とは>
日常活動の中に織り込んだ習慣なら、道具も時間も無用です。いわば忘れていてやってこなかったことを思い出すこと。分かってはいるが、忙しくてやらなかったこととか、一人じゃ気が引けて取り組みを先送りしてきたこと、前は継続できていたがなんとなく自然消滅したQC的な活動。朝礼や終礼で確認唱和してきたけど、
いつからか忘れてしまったこと。
こんな「当たり前のことを、当たり前に実践しよう」という取り組みは、物流現場でも工場でも良くある事です。工場の安全対策は人命に直結しますから、定期パトロールに組み込まれていることが多く、5Sや労災防止の仕組みが出来上がっているといえるでしょう。
ところが物流現場では、指差し点呼、ヘルメットや安全靴、危険地域のマーキングなどの定期パトロール自体が行われることがありません。運送会社でのKY会議すら形骸化しているのではないでしょうか。

<そこで、年に一度の健康診断>
『20の観点:物流評価ベンチマーキング』(http://www.avance-tokyo.com)
これは、私が考え出した感じる物流、直観の印象を採点する20問の○×テストです。ビジネスは戦争に例えられます。より強く、より大きく、より早く、よりより~~。ちょっと待って。確かに営業や生産、経営企画や新技術の情報システムは新しい、強力な切り口を求めています。片や人事や総務、経理や管理部門はこのようなパワーを支えるために母の役割を担います。強い父と優しい母、外に打って出るパワーと内に秘めた慎重さ。オトコとオンナ、光と陰、。物流活動っていうのは、静かな内なる力によって競い、生き残っていくような気がしませんか。

◆どんな物流が最高なのか
日々奮闘、毎日新たな問題が生まれてくる物流現場では、座して待つ、机で考えて答えを出す様な習慣がありません。いつも走りながら考え、その場その場で答えを出し、トライアルアンドエラーの繰り返しから進化を続けて行こうとします。昨日と同じ状況は当分起きそうもありません。去年のデータは、ハッキリ言って役に立ちません。だからといってデータを取るのを止めると、主張や思考に根拠がなくなります。外部に対しての説明責任や説得の方法がなくなってしまいます。
役立たずのデータであっても事実の記録は大切です。そこで、どんなデータを集めるのか。つまり、「物流の仕事をどうやって見ているのか」ということから考えて見たいと思います。いわば、<これから、ありたい我々の姿>というものを考えながら、走り続けなければなりません。我々の職場は似て非なるモノばかりです。産業や規模が違えば、物流の仕事は全く別物。一つとして「あ~、ウチと同じですね」などという会話は聞いたことがありません。
ミスがなければ、コストが下がれば、従業員が辞めなければ、社長から評価されれば、業界の話題になれば、設定した目標が毎年クリアできれば、事故や災害がなければ、在庫紛失がなければ、もっと広ければ、近ければ、早く帰れれば・・・・・我々の理想は決して高く遠いモノでないはずなのに、なかなか手が届きません。すぐに手中を離れて行きます。理想の物流、どうやって見ればいいのでしょう。
最高の物流は共通している要素があるのです。我々は仕事の成果を何に求めるか、どんな結果が望ましいか、どんな状態が心地よくて嬉しいのか。そんなことを長年考えてきて、いま現在の答えが【物流現場の12の視点】というものです。
<優れるための12の視点>
順序や程度、ランクや密度は別にして12の要素がバランス良くある時に、我々の職場はありたい姿に近づいています。少しずつ紹介していきます。
下記の通り、チェックシートはものすごく簡単です。誰でも新人でもパートさんでもチェックできるはずです。しかもそんなに回答はぶれません。つまり、みなさんの現場の改善テーマは誰でもが認識していて、気づかず忘れていただけなのです。
1 自律性 物流部門独自の自律性があるか
2 顧客満足
志向
他部門や顧客を基準とした、満足志向の取り組みがあるか
3 安全と5S 安全を最優先し、整理整頓清掃清潔しつけの5Sへの徹底があるか
4 見る管理 目で見てわかる管理をあらゆる場面で採用しようとしているか
5 時間軸 スケジュール、優先順位など時間を意識した計画と実績を捉えようとしているか
6 まとめ 適切な空間、時間の区切り、束ね方などの、間、止め、まとめが意識して採用されているか
7 在庫 あらゆる在庫を適切に管理して、いっそうの削減施策を実行しているか
8 働く意欲 職場の意欲を高める工夫と実際の作業者に意欲が感じられるか
9 ツールの
メンテナンス
利用する施設、設備、道具に保守計画と点検記録が実物に貼付されているか
10 変化対応力 新しい取り組みや季節変動、緊急対応の準備や訓練、取り組みが感じられるか
11 情報の活用 職場で把握できる情報を追究し、活用や転用、情報の発信に意欲的か
12 品質への
こだわり
すべての活動によりよい品質と目標や実績の記録が取られているか